2007年5月29日火曜日

サムスンの低迷

自殺した松岡利勝・農林水産相についてのニュースはまだまだ続いている。これからもっと出てくるだろう。改めて考えるのはそれからだ。

藤原直哉のインターネット放送局で、松岡農水相について話題にしている。取り敢えず今の段階で批評できるのは、この程度だろう。



今日ニュースを見ていて、興味を持ったのは、大臣の自殺の件以外には、このサムスンについての記事だった。

「低迷サムスンが「緊縮経営」発表・気になる韓国の空洞化と財閥体質」(Nikkei Netより記事を引用)

 5月28日、韓国のマスコミはサムスン電子の「緊縮経営」を経済面のトップニュースとして一斉に報じた。営業利益、純利益が2007年1−3月期もまた前四半期比でそれぞれ42%、32%減ったのを受けた経営改善策だ。DRAM市況の低迷やウォン高の打撃で、利益は4年前の水準まで落ち込んでいる。サムスン電子はデジタルメディア総括、情報通信総括といった部門別に新しい主力業種を探して戦略を修正するとともに、経費節減と生産性向上に必死になっている。(趙章恩)
 サムスン電子の主力商品である512メガバイトDRAMは市況の回復が期待されていたが、供給過剰で価格は1.7ドルまで落ち込み、原価の1.5ドルすれすれの状況になっている。
 一方、ウォンドル為替レートも一段とウォン高が進み、最高値を連日更新している。ウォン相場が10ウォン上昇すると、サムスン電子の営業利益は3000億ウォン減る。円安ウォン高も深刻な状況で、この10年でウォンが25%も高くなった。このままでは4−6月期の利益水準は1兆ウォンを下回ってしまう。

■役員リストラのうわさも

 株価もさえない。5月28日、サムスン電子の時価総額は80兆6815億ウォンで、韓国株式市場全体の時価総額814兆5120億ウォンに占める比率は9.9%。わずか0.1%とはいえ、1999年10月以来初めて10%を下回った。2004年4月にはサムスン電子の時価総額が23%に達していたことを考えると大きな落ち込みである。

 株価指標のKOSPI指数は上がっているのにサムスン電子だけが下落しているのは、それだけ韓国経済に対する影響力が小さくなったからとみられている。だた、業績回復の兆しがないのも原因で、赤字を出しているグループ会社の切り離しまで噂される始末だ。
 実は今回サムスン電子が発表した緊縮経営は、すでにLG電子やハイニックス半導体が3月から取り組むなど、韓国の電子系企業のほとんどに広がっている。ただ、サムスン電子の社員らの反応を聞くと「今回の緊縮経営発表は予防や段取りではなく戦争そのもの。すでに昇給は凍結、新規採用も中途採用もなくなった。IMF経済危機の時にも行わなかった役員のリストラ話まで噂されている」というほど緊迫した状況のようだ。

 生産現場でも合理化・効率化が進んでいる。マスコミにはあまり報道されないが、地道に経営改善に挑んでいるのはLG電子だ。LG電子は生産効率を極大化する「Tear Down&Redesign」という革新プログラムを13年間続けており、生産現場の無駄をなくす専門家チームも組織している。プラズマパネル事業のリストラも始めていて、厚さ2.8ミリだったプラズマパネル後面板ガラスを1.8ミリまで薄くし、部品単価を30%ほど節減できる新工程を開発した。これは2007年下半期から導入される。
 LG電子とLGフィリップスの原価節減モデルもよく知られている。「トーネイドプロジェクト」と名づけた取り組みで、両社が共同開発している既存のパネル生産とテレビ製造工程を統合させ費用を大幅に節減した。LG電子はこのプロジェクトの結果、液晶テレビの部品点数を大きく減らすことができ、42インチ型液晶テレビで64%の原価低減を達成した。42型の薄さが49ミリ、重さが15キログラム減るなど、商品性の向上にもつながっている。トーネイドの次には「ビアズ」というプロジェクトを始める。
 サムスン電子も「モンブラン7段階プロジェクト」と呼ぶプロジェクトで、液晶テレビの製造原価の20%ほどを占める液晶パネル駆動ICを既存の4分の1にまで減らすなど、製造費用の節減を進めている。

■国外移転も「パリパリ(早く早く)」気質

 業界関係者の間では「費用節減には限界があり、結局は技術力で勝負するしかない」という意見も多い。サムスン電子を支える半導体の場合は技術向上が利益につながるからだ。同じ設備を使ってより多く生産するのも重要だが、次世代技術に早く転換することでより早く利益を出すのが競争力ともいえる。

 サムスン電子もLG電子も韓国内では費用節減、賃金節減と厳しい。ただし、海外投資にはとても積極的だ。サムスン電子は1万円以下の低価格の携帯端末製造のため、ベトナムに工場設立を検討していると発表した。これで韓国では年間700人ほどの職がなくなる。中国とインド工場の増設を含めると2年後には8000人ほどの職が失われる。
 サムスン電子は今年のR&D費用の4割を海外に振り向ける計画だ。しかし、だからといって「サムスンはひどい」とは言えない。ライバルのモトローラやノキアが既にグローバル生産体制を築いているのに、サムスン電子には愛国のため生産コストが高くても韓国にいてほしいとは言えないだろう。

 韓国財政経済部の統計をみると、韓国企業の海外直接投資は毎年急増していて、2006年は前年比2倍と伸び180億ドルを超えた。その25%が中国に投資され、中国を含むアジアへの投資は103億ドルで全体の56%を占めている。北米は16.5%、ヨーロッパは15.6%だった。
 海外投資に積極的なのは安い賃金と土地を求めてというのが一般的だが、実際には韓国の首都圏の不動産バブル、工場を新設できない厳しすぎる土地利用規制、生産職労働組合との問題なども影響している。
 当然だがその分、韓国内の製造業は穴が開いてしまっている。このままではコストの低い海外への移転が加速し、雇用が減り収入が減り消費も減少し経済成長も鈍化する悪循環になってしまうのではないかと怖くなる。産業資源部の調査によると、大手企業上位200社の2007年の韓国国内投資は前年比6.8%増加の56兆4000億ウォンの見込みだが、このまま海外投資が毎年2倍ずつ成長すれば2年後には金額が逆転する。
 原価節減のために仕方ないとしても、そのペースが速すぎる。パリパリ(早く早く)の国民性らしく即断即決で工場が海外に移転し、優秀な人材も職を求めて海外に移る。生産を海外に移して韓国内はよりハイレベルな産業のブレーンになるはずが、どうも予想がずれてしまったような気がする。企業も政府もあれこれ思案はあるようだが、12月の大統領選挙が終わってからでないと踏み切れないという雰囲気もある。

■「会社のカネで外遊」ブログで自慢

 一連の緊縮経営の報道を見ていると、必死の覚悟で経営改善のためにがんばる会社もあれば、企業が社員の恐怖心をあおることを狙って頻繁に「非常経営」「緊縮経営」を発表する会社もあることが分った。社員に愛社心を強要しつつ、社員を減らし賃金を大幅削減するだけのリストラで満足するところも少なくなく顰蹙(ひんしゅく)をかっている。
 本当に企業が危ないなら、社員を苦しめる前に「会社の財産は自分の財産」と考える財閥オーナー一家の姿勢から変えるべきではないだろうか。
 物価は毎年10%以上値上がりしているのに、社員の賃金は2%も上がらない。なのにオーナー一家は名前だけ役員に連ね、社員が一生働いても手にできない金額を年俸としてもらっていく。
 しまいには「事業開発のためのヨーロッパ研修」と称して会社の金でホテル代だけで月数千万円を使い、それを自慢げにブログに書き込んだ財閥の娘もいる。持ち株会社の株を極端に安い値段で特定人物に集中的に売り、経営権を継承しようとしたのがばれて裁判中の会社もある。韓国企業のグローバル化はますます進むだろうが、このような経営体質を抱え続けて大きな落とし穴に落ちなければいいのだが。
[2007年5月29日]


サムスンの収益が落ちているのは知らなかった。経営用語でよく使う「選択と集中」というのがあって、日本企業が事業内容を拡大していって、不況入りした時に、広げた事業のいくつかが赤字になり収益を圧迫するということが起きた。

そして赤字部門は切り離してしまい、得意な分野や収益の高い分野にしぼって、事業を効率化していこうという時に、この選択と集中という言葉はが使われたと思う。

得意な分野を如何に伸ばすか、そこで如何に収益を上げるのか、という問題で、話題になったり注目された企業の一つが、このサムスンだったと思う。ところが今になって、伸び悩みが出ているようだ。

サムスンと言えば、液晶テレビやモニター、そしてパソコンなどに使われるメモリの製造で有名だ。しかし市況の悪化や為替の問題などで、収益が圧迫しているようだ。この状況に対しては緊縮経営や経営戦略の立て直し等で対応しているようだ。緊縮経営には経費や製造コストの削減、リストラなどが含まれているようだ。経営戦略の立て直しは部門別に行われるようだが、詳しいことはこの記事からではよく分からない。

日本のメーカーが不況で喘いでいる時、リストラによる人件費の削減や製造コストの見直し、工場の中国などへの移転といったことがあった。激しいリストラやコスト削減で、今では「筋肉体質」と呼ばれるくらいの企業体質が出来上がっている。

それは2000年以降に顕著になった。その頃から韓国の企業が躍進してLG電子やサムスンが国際的に活躍するようになった。

あの頃は日本企業の得意分野だった液晶やメモリなどが為替の問題もあって韓国勢に取って変っていった。もう液晶もメモリも日本が一番強かったという時代ではなくなった。

そして今度は韓国の企業であるサムスンがかつての日本の企業と同じように為替や市況の悪化などに苦しんでいる。やはり日本と同じように激しいコストの削減やリストラの断行といった大変な問題を抱えるようになった。

まるで日本と同じ道を歩んでいるかのようだ。日本の方が早くこの問題があったから、すでに乗り越えている問題も多いはず。サムスンなど韓国企業はこれから数年をかけてコストの削減とリストラを経た上で、日本と同じように「筋肉体質」の企業へと移行していくのだろう。

韓国企業が筋肉体質化を遂げた後、はたしてその時の日本企業はどうなっているのだろう。より進んだ筋肉体質にでもなっているのだろうか?あるいは、もっと別の形態に変っていくのだろうか。

とにかくこの記事から察すると、韓国企業はこれから数年間が勝負だろう。現在の緊縮経営と新しい経営戦略とで、どれだけ効果が出せるか。新技術の開発にも大きな資金を投入させないとダメだろうし、なかなかキツい状態が続くだろう。

これから数年間は中国の台頭やEUの動き、アメリカの住宅バブルの問題など世界経済や政治の上で変化のありそうな時期だ。この問題が企業経営とどのようにリンクしていくかで、その企業の勝敗が決るような気がする。本当に世界に通じる技術と経営手法だけが生き残る時期なのだろう。これは韓国だけでなく日本も同様である。