2007年5月20日日曜日

フリーターの権利

フリーターに関する2つのニュースを読んだ。最初は東京から。


「16歳「茶髪」少女 バイト先からクビ通告 個人で労組へ」(asahi.comより引用)
2007年05月19日19時11分

ビジュアル系バンドや少女漫画が好き。そんな16歳の少女が、髪の色を理由にアルバイト先の店長から突然、クビを通告された。「納得できない」。彼女は闘うことを決めた。個人加盟できる労働組合(ユニオン)に入り会社と交渉、撤回させた。

 東京都練馬区の福家(ふくや)菜津美さん(16)は昨春、中学を卒業。高校には進まず、母と姉の3人暮らしの家計を支える。

 週5日、朝8時から夕方5時まで牛丼チェーン店で働く。さらに週2、3日は午後6時から9時半までファミリーレストランで。ダブルワークで月収は約16万円。高卒認定試験(旧大検)をとって大学に進み、獣医師になるのが夢だ。

 ところが3月、ファミレスの新店長に「髪の色を黒くしなさい」と指示された。極端な茶髪ではないし、店では規則通りに束ねている。1週間考えた後、拒否した。店長からは「それなら一緒に働けない」と告げられたという。「1年間、一生懸命働いて時給も20円あげてもらった。それが髪の色だけで否定されることが悔しかった」

 首都圏青年ユニオンに入って交渉することにした。4月の団体交渉には、同ユニオンの16人が支援に駆けつけてくれた。会社側は「解雇通告だというのは誤解」と説明。店長の「クビ」発言についてもはっきり認めない。だが福家さんは「一緒に働けないと言われたら、クビと同じじゃないですか」と思いをぶつけた。交渉の結果、会社は、髪を黒くしなくても今まで通り働くことを認めた。

 福家さんは20日に東京・明治公園である「全国青年雇用大集会2007」で体験を話す。

 「16歳でも、働く人の権利を知らないと絶対損をする。何も知らなければ、何も言うことができません」


16歳の若い女の子が、自分の労働の権利を守るために、勤めるお店側に自分の権利を認めさせた。「茶髪ではダメ」ではまるで校則みたいだが、接客業ということで、規則がそれなりにあるのだろう。

それにしても、首都圏青年ユニオン(こうゆう所があるのを知らなかった)というのに入っるだけでも、16歳という年齢では行動力があると思う。

ユニオンの仲間16人が店側との交渉で一緒に応援してくれた、ということだが、お店で働くフリーターの中ではたった一人の戦いだろう。そうした中で何とか自分の権利を認めさせるところまで行って、この女の子は偉かったと思う。

学校でも職場でも、自分の正当な権利なのに、時にそれをなかなか認めないとこがある。正当な権利を通すだけでも、かなりエネルギーを使うし、ストレスも溜まる。神経をすり減らしながら戦うことになる。大人になれば誰でも人生経験の中で一度くらいは、こうゆう体験をする。勿論その体験の質には軽重があるが、社会の中での個人の弱さを身にしみて感じるものだ。

この女の子は写真でも、ずいぶん良い顔をしているし、多いに好感が持てる。バイトをしながら高卒認定試験(旧大検)を取って、獣医になりたい、というので、是非頑張って欲しい。

まぁ、個人的には獣医にしておくのはもったいない女の子だと思うが。できれば弁護士とか、政治家とか、そうゆう方向にいって欲しいと感じてしまった。



フリーター関連のニュースをもう一つ。次は福岡から。

「「もう我慢の限界だ」 フリーター労組がデモ、福岡で」(asahi.comより引用)

福岡市の天神・大名地区の路上で19日、フリーターなど低収入で不安定な暮らしを強いられている若者たちがデモ行進をした。デモ隊は台車にステレオを載せ、大音響でダンス音楽を鳴らしながら「もう我慢の限界だ」「まともな仕事をよこせ」「フリーターを使い捨てるな」などとマイクで絶叫、自分たちの「生きづらさ」を訴えた。買い物客らで混雑する夕方の繁華街は一時、騒然とした雰囲気に包まれた。

フリーターなどでつくる労組「フリーターユニオン福岡」(小野俊彦執行委員長)の主催。「五月病祭」と名付けられ、主催者発表で約90人が参加した。「生きさせろ!難民化する若者たち」などの著書がある作家、雨宮処凛(かりん)さんが「景気回復は(低賃金で働く)フリーターのおかげだ」とシュプレヒコールを上げると、沿道の若者たちから拍手と歓声が沸いた。

 デモの前には、同市中央区の教会で、雨宮さんが「生きづらさの変化」と題して講演。「いまの政治は『役立たずは早く死ね』と、生存権の切り崩しを進めている」などと主張した。


この福岡の場合、90人の参加で具体的な職場への要求というものではない。抽象的・一般的な労働者の権利をフリーターにも、という主張のようだ。

記事に「繁華街は一時、騒然とした雰囲気に包まれた。」とあるが、同時に掲載されている写真から判断すると、そんな雰囲気は感じない。むしろ仮装パーティーのように、いろいろ工夫して、面白い雰囲気すら感じる。「騒然とした雰囲気に包まれる」といわれると、違和感を覚える。

色々と見た目を工夫して、街行く人たちの関心をできるだけ喚起しようという意志を感じる。自分の問題でなければ、所詮は他人事、という風潮もある中、フリーターの権利を主張していくのはたいへんなことだろう。この人たちも是非頑張ってもらいたいものだ。

従来は、フリーターというと、社会的な発言はせず、勿論、労働運動などには関係のない存在というイメージがあった。むしろ、労働組合や職場の煩わしい人間関係から解放されたい人達が多くいた、という印象もある。

ところが、こうしたフリーターによる労働組合とか、労働する権利の主張などが出てきた、ということは、それだけ現状がキツいことを意味するのだろう。フリーターには「ネットカフェ難民」もいるし、若者にとってはかなりしんどい環境になっているようだ。

政府は黙ってみてないで、フリーターを巡る環境や問題をもっと調べた方が良い。そしてフリーターを保護する政策を考えるべきだ。