2007年5月21日月曜日

G8で為替議論せず

G8の記事で少々気になった点についてのメモ。


「G8で為替議論せず、ヘッジファンド間接監視で合意」(asahi.comより引用)

[ポツダム 19日 ロイター] ドイツのポツダムで開かれていた主要8カ国(G8)財務相会合は19日、世界経済が引き続き堅調との認識を示すとともに、主要テーマだったヘッジファンドの透明性向上に関しては、銀行などヘッジファンドの取引相手を通じた間接的監視を行うことを盛り込んだ共同声明を採択して閉幕した。円安が進行する中での会合となったが、為替について踏み込んだ議論は行われなかった。

 <ヘッジファンドのリスクを引き続き警戒>

 注目されたヘッジファンドに関する議論では、共同声明において「先端金融技術・商品の隆盛とともに金融システムの効率性に大きく貢献している」と評価しながら、急拡大する取引規模を踏まえ、システミック・リスクなどを引き続き警戒すべきとした。

 もっとも、具体的な規制・監視のあり方に関しては、かねてから議長国のドイツが提唱していたヘッジ・ファンド業界に自主的な「行動規範」を求めるものではなく、業界に情報公開の充実を促しながらも、銀行などヘッジファンドの取引相手方(カウンターパーティー)を通じた間接監視に委ねるものとなった。「監督当局は、主要な金融機関が継続してヘッジファンドに係るリスク管理慣行を強化するよう仕向けるべき」との文言も盛り込んだ。

 会合後に記者会見したシュタインブリュック独財務相は「われわれが一致できなかったのは(政治家が)このアプローチを主導し、われわれのスーパーバイザーがそれをチェックするのか、あるいは市場にすべてを任せて対話ベースで対処するのかだ」とし、ヘッジファンドに関する議論は銀行や当局を含めて議論を続けると述べた。

 また、会合ではヘッジファンド活動のモニターに関して尾身幸次財務相が、ヘッジファンドと取引をする証券会社、銀行などの金融機関との意見交換を提案し、「全会一致で賛同してもらった」(尾身財務相)という。同財務相は、秋の7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)で意見交換の機会を設ける見通しも明らかにした。

 <円安批判は行われず、人民元は一層の柔軟化必要>

 今回のG8は、外国為替市場で円安が進行する中での会合となり、為替に関する議論も注目されたが、踏み込んだやり取りはなかった。2月に同じくドイツで開催されたエッセンG7では、欧州当局者を中心に事前に円安けん制発言が繰り返されたが、当時よりもユーロ高/円安が進んでいるにもかかわらず、為替議論は鳴りを潜めた。

 シュタインブリュック独財務相は会合後の会見で、為替問題は議論しなかったと表明。尾身財務相も「中央銀行総裁も入っておらず、為替レートの問題はあまり議論にならなかった」と述べた。

 もっとも、中国が人民元の対ドル変動幅を拡大させたことについて尾身財務相は「人民元の柔軟性を一層高める必要があるというのが(G8諸国の)大方の意見」とし、「そういう方向に沿ったもの」と評価した。その上で「さらに柔軟性を高めてほしいという点でも意見が一致している」と付け加えた。

 <世界経済は引き続き堅調、米経済に楽観的な見方も>

 共同声明では、世界経済の認識について「引き続き堅調であり、G8各国国内においても、より均衡のとれたものになっている」として、良好な環境が継続しているとの見解を表明した。世界経済のリスクについては、減退しているとの認識を示したうえで「高く不安定なエネルギー価格は依然として懸念事項であり、引き続き警戒」として原油などエネルギー価格の動向を懸念材料にあげた。

 個別の国への言及はなかったが、注目が集まる米国経済の先行きについて、ポールソン米財務長官の代わりに出席したキミット財務副長官は「第1四半期の経済成長率は控えめだったが、年内に潜在成長率に向けて回復することに自信を持っている」と楽観的な見通しを示した。さらに、サブプライム・ローン(信用度の低い借り手への住宅融資)問題に関連しては「住宅(セクター)が安定化し、サブプライム・モーゲージ市場での延滞の増加が、より広くに波及している兆候は見られない」と語った。

 尾身財務相は会合で日本経済について「一般的な話の中で、物価安定のもとで順調に回復を続けていると説明した」という。


この記事で、やはり我々日本人の関心を引くのは、為替についての箇所だろう。何故か円安ユーロ高の問題を議論しなかったのが、いささか不思議だ。欧州の蔵相が多いのに、どうしてこの問題を議論しないのだろうか。かなり円安ユーロ高が進んでいるのだから、議論して当然だと思うし、議論すべき問題と思うのだが。

また為替レートを議論しない理由として、「中央銀行総裁が入っていない」というのも少し奇妙だ。為替レートは中央銀行の総裁のみが議論できる問題でもない。むしろ行政である財務省や通産省などの方が輸出企業側からいろいろと文句や要請が出て、まさにG8で議論すべきことだと思うのだが・・・・円安ユーロ高に、なにか我々に知らされていない、別の理由があるのだろうか?

この記事では世界経済は引き続き堅調だとして、米国経済も楽観できる、などとしているが、これも少々違和感を感じる。確かに世界経済の上では、大きな問題を引き起こすファクターはあまりないのかも知れない。しかし欧州でも日本でも若者の失業問題、フリーターの数の多さや、賃金の低さなどの問題があるし、経済格差の問題もある。フランスでは先日の大統領選挙の時に暴動が起きたように、必ずしも国内経済に問題がないわけでもない。だから経済が引き続き堅調だとするのは違和感がある。

それにアメリカの住宅バブルの問題は今だに深刻だと思うし、この記事で言う「サブプライム・モーゲージ市場での延滞の増加が、より広くに波及している兆候は見られない」から大丈夫だとするのも、いささかいい加減な印象を持つ。アメリカの住宅バブルは、確か、住宅価格の高騰で、そこから出る含み益の部分をさらに投資にまわす、ということをしていたと思う。この含み益の部を元にして銀行から借り入れをし、さらに住宅や株式などに再投資をするという行動をしているそうだ。

だがこれが一旦、逆回転をし出したら、バブルのはじめるエネルギーは凄まじいはずだ。こんな楽天的なことを言える程甘くないはずだ。

今回のG8は、アメリカはポールソン財務長官の代わりにキミット財務副長官が出席したようだし、上記のように為替問題は無視、世界経済の堅調だの、米国経済は大丈夫だとか、なんか「本気」じゃないなあ、と感じてしまう。何か、スカスカな感じのするG8という印象だ。