2007年5月15日火曜日

スイスも日本と組みたがっている

スイスインフォのニュースを読んでいると、スイスは日本と組むことに積極的なようだ。中国も日本との関係を修復した。日本の持つ環境技術や工業技術が優れているので、これを中国に導入したいということなのだろう。中国のみならず、今度はスイスも日本と経済連携協定の交渉をはじめた。

「スイスと日本 経済連携協定の交渉を開始」(swissinfoより記事を引用)

ミシュリン・カルミ・レ大統領兼外務大臣は1月19日、安倍晋三総理と電話で会談し、自由貿易を中心にした包括的な協定、経済連携協定 ( EPA ) を結ぶための交渉を公式に開始すると発表した。
経済省経済管轄局 ( seco ) のダニエル・ゲルバー局長によると、 事務レベルでの交渉グループが作られ、1年以内に経済連携協定の成立を目指すことになるという。

 カルミ・レ大統領兼外務大臣と安倍総理は今回の電話会談で、交渉入りを正式に合意した。経済連携協定のほか、国際連合における協力、資金洗浄の犯罪取締りのための協力の強化なども進められる。

包括的な協定

 過去1年半にわたり両国は、協定の可能性に向け研究会を持ち定期的に会合を開いていた。内容は工業製品や農産物の関税率引き下げだけではなく、物品の往来、サービス業、投資、滞在ビザ、知的財産保護にも及ぶもようだ。工業製品については関税の全面撤廃、農産品については、一部関税が維持されるもようだ。

 スイスはEFTA加盟国だが「日本との交渉は、EFTAを通さずスイス独自で行う」とゲルバー局長。1年以内に交渉を終了し調印に至ればと期待を掛けている。

スイス側は積極的

 スイス側は交渉に非常に乗り気で、ゲルバー局長は1月13日付けのドイツ語圏の日刊紙ターゲス・アンツァイガーのインタビューで「日本は欧州共同体 ( EU )、アメリカに次いで3番目に重要な輸出相手国だ。化学薬品、医薬品、時計、機械分野などで特に重要だ。知的財産の保護がしっかりしており、国際ビジネスマンの意識がスイス人と同じレベルにある」と語っている。

 大和総合研究所の浅野信久部長は、スイスのバイオベンチャーを評価するアナリストの1人だが、自由貿易交渉の開始に向け「医薬品、人材の交流が盛んになること。医療面での交流も高まればよいのでは」と語った。また。日本のベンチャー子会社が、スイスにもできればと言う。スイスはバイオ産業のベンチャー企業を積極的に受け入れる土壌がある。

swissinfo、佐藤夕美 ( さとう ゆうみ )


「スイス、自由貿易協定で日本に大きな期待」(swissinfoより記事を引用)

ドリス・ロイトハルト経済相は、世界貿易機関 ( WTO ) の多角的貿易交渉 ( 新ドーハ・ラウンド ) が年内に合意する可能性はまだあるが、進行状況はそれほど良くないと語った。
さらに日本との経済連携協定にスイスは大きな期待を寄せていると述べた。

 4月26日、ロイトハルト経済相は新ドーハ・ラウンドに関し、「年内合意に向けての各国の強い意志はあるが、今後の数週間が年内合意の可能性を左右する時期である」と語った。6月の末に、米ブッシュ政権の交渉を早く進める特別な権限が切れる。その前にどこまで交渉が進むかが1つの鍵になるという。

決定的な時期

 ロイトハルト経済相は、ジュネーブでの今年2月の閣僚会議以来、緩慢な進展しかなく、それはアメリカがいつも問題だからだと指摘し「ブッシュ政権はもっと柔軟な対応を約束しながら、具体的な結果はまだでていない」と語った。 

 また、世界貿易機関 ( WTO ) のパスカル・ラミー事務局長も先週の初めに、「アメリカの有効なリーダーシップの欠如がこの重大な時期に、合意に向けての希望をそぐ結果になっている」と述べている。

 3週間後の経済協力開発機構 ( OECD )での閣僚会議を含め、今後数週間が新ドーハ・ラウンドの重大な時期。農業分野が大きな障害にならず年内合意に至るか否かがこの時期で決まるという。

 スイスは農業分野、サービス分野、非農産品分野を個別に交渉するのではなく、均衡を保つため、1つのパッケージにして交渉しようとしている。「この姿勢が結局、それぞれ利益の違う国にとっても平等を保つことになる」とロイトハルト経済相。

日本との経済連携協定

 ロイトハルト経済相は多国間貿易協定が進行しない中、2国間自由貿易協定に言及し、現在進行中の日本との経済連携協定は「スイスの優先課題で、お互いの利益になる協定である」と語った。

 「スイスと日本は経済形態に多くの類似点があり、農業分野での利害はほとんど対立するところがないため、交渉上大きな問題はない」と述べ、さらに医療関係とサービス分野において、スイスは大きく得るものがあり、直接投資も活発になると期待を寄せた。

 「日本との経済連携協定が成立すれば、スイスはヨーロッパで唯一、日本とこうした関係を結ぶ国になる」というロイトハルト経済相の発言はスイス側の協定成立への大きな期待を表すもの。

 また、日本との交渉はすでに締結した韓国との経済連携協定の経験を生かしての交渉になると締めくくった。

swissinfo、アダム・ボーモント 里信邦子 ( さとのぶ くにこ )


記事によれば、スイスからすると、日本は経済形態に似たところが多く、農業分野での利害対立もほとんどないため、日本と交渉しやすいそうだ。また、日本と直接に経済連携協定が成立した場合は、スイスがEUの中で唯一のこうした関係を持つ国になるそうだ。

これだけでもスイスが日本との関係を強化したいのが良く分かる。またスイスがEU内部やヨーロッパから近いロシアなどの国の他に、敢えて日本との関係を強化したいというは、EUやその周辺国の経済状況がすでに頭打ちになっている証拠かも知れない。

スイスはすでに韓国と経済連携協定を結んでいるらしいが、今度は日本ということで、東アジアに対する国際関係の中で、EUの中でスイスが大きな位置を占める可能性もある。

スイスは金融が有名だから、金融面での日本への進出も当然考えられるだろう。記事には金融については何も書いていないが、個人的にはスイスの技術や農産物よりも、スイスが金融面で、どのような進出を望んでいるのかに興味ありだ。

スイスの経済戦略には興味があるが、本当のところスイスが何を考えているのかはよく分からない。スイス人は頭が良いので、その意図をよく見ておく必要もあるだろう。まあ、日本がスイスとの経済協定で損をすることはあまりないだろうが、相手の意図を良く見据えた上で日本も交渉すべきである。

ちなみに日本からすると、あまりスイスとの協定に興味がないようで、ニュースの扱いはこんなものだった。


「日本とスイス、経済連携協定の交渉を開始」(Nikkei Netより記事を引用)

 政府は14日、スイスとの自由貿易協定(FTA)を核とした経済連携協定(EPA)締結に向けた第1回の政府間交渉を都内で始めた。18日まで協議する。日本が欧州の国とEPA交渉に入るのは初めて。初日は工業品の特許や音楽・映画の著作権の保護などを巡って話し合った。日本とスイスは2008年中にもEPA締結で基本合意する見通しだ。


こんなに簡単に書かれておしまい、という感じだ。アサヒコムでも記事を探したが見つからず、掲載していないようだった。

日経の記事では、音楽や映画の著作権の保護の問題が書かれているが、スイスインフォの記事では重視されていない。考えてみると、スイスと日本との間で音楽や映画の交流なんて聞いたことがない。日本はスイスの音楽なんてあまり聴かないし、スイス映画も観たことがない。そんなものがあること自体知らない。

スイスからしても日本の音楽なんて聴かないし興味もないだろう。日本映画もあまり知らないだろう。小津安二郎などは所詮、インテリ向けのもので、欧州でも日本映画を知っている人はごく一部だろう。

それなのに、何故音楽や映画の著作権の話をするのか意味不明である。ここからすると、経済協定の本当の意図はもっと別のところにあるのではないか?何か本当の意図を隠しているかのように思えてきてしまう。

まぁ、スイスが日本に進出してきても、せいぜいがプライベート・バンクとか、投資がらみのものではないか?その他の製造業やサービスなど例え進出しても、日本の土壌の中で生き残るのは難しような気もする。フランスのカルフールだって、撤退してしまったし、外国のサービスは意外と日本に根付かない。日本に合う商品やサービスを考えてビジネスしないと、けっきょく撤退する企業が出て来るように思う。

製造業に関しても、日本では欧州のものは高級品ぐらいしか売れていない。その他のものはセンスはいいにしても値段が高くなり日本で買うメリットがあまりない。関税を引き下げても基本的にそう安くはならないだろう。特にスイスの工業品は時計など高級なもので、やや値段が下がったとしても、たかが知れているだろう。

そんなことで本当にスイスにとてプラスになるのだろうか。疑問に思ってしまうところもある。むしろスイスが欲しているのは、おそらく日本の技術協力なのだろう。だが、それだと関税の問題など話し合う必要もないだろうし、どうも全体的によく分からないところが多い。

もっともスイスが日本の資金を欲しがっていて、スイスに投資してもらいたいと考えていたり、逆に日本にスイスの資金を投資をしたいと考えているなら関税の問題は出てくるかも知れない。