2007年6月29日金曜日

小学生の抑うつ

小学生に抑うつの症状を示す者がいるという記事を読んだ。個人的には意外な事実だったが、現在の学校崩壊、学級崩壊の現場に身を置く子供にとってみれば、意外でも何でもない、ということになりそうだ。

印象に残った記事なので引用と若干のメモ。


「抑うつ状態の小学生、自殺考える傾向4倍 学会で発表へ」(asahi.comより記事を引用)
2007年06月27日17時34分

 小学4〜6年生の1割以上が抑うつ傾向にあり、自殺を考えるリスクは抑うつのない子に比べて4倍高い——。そんな調査結果を宮崎大教育文化学部の臨床心理士・佐藤寛さん(発達臨床心理学)らがまとめた。「子どものうつを軽く見ず、早い段階で周囲が手をさしのべる必要がある」と佐藤さんは話している。29日から札幌市で開かれる日本うつ病学会総会で発表する。

 佐藤さんらは05年7月、茨城県内の小学4〜6年生669人を対象にアンケートを実施。「泣きたい気がする」「生きていてもしかたがないと思う」など18項目について聞き、抑うつ度や自殺を考える傾向を分析した。3カ月後と6カ月後にも同じ調査をした。

 その結果、抑うつ傾向のある児童はいずれの調査でも15%前後おり、3回とも抑うつを示した子も5%いた。自殺を考える傾向も児童の15〜20%にみられ、3回ともみられた子は2%だった。

 1回目の調査で抑うつ傾向があった児童はなかった児童と比べて、3カ月後に再び抑うつを示すリスクが5.6倍、6カ月後は6.1倍高かった。また、自殺を考える傾向は3カ月後が4.3倍、6カ月後は3.8倍高かった。

 1回目で自殺を考える傾向のあった子が3カ月後に同じ傾向を示すリスクは5.5倍、6カ月後は4.1倍だった。

 抑うつの原因は、友人関係のストレスの度合いが最も大きかった。ただ、自殺を考える傾向には友人、教師との関係、学業などが複合的に影響していると分析された。

 警察庁によると、06年の小中高生、大学生らの自殺者数は統計をとり始めた78年以降最多の886人だった。また、子どものうつは見過ごされがちなうえ、一部の抗うつ剤は自殺のおそれが高まるとして18歳未満の服用が禁じられており、治療の難しさが指摘されている。

 佐藤さんは「親や教師が子どものうつ状態に気づくことが重要。抑うつの引き金は過去3カ月以内の出来事が関係しているとの結果も出ており、まずはその解決を図ることも効果がある」と指摘している。



自分の世代で、小学生の頃にうつ病や、それに類する症状を持った者がいたかどうかを考えると、少なくとも自分の周囲にはいなかったのではないかと思う。

もっともこの記事では、詳しく書いていないため、「うつ」という言葉使いが、どういった性質のものなのか、いささか不明瞭だ。

例えば記事では、小学生にアンケートを実施した結果、うつ的な傾向があることが分かった、という雰囲気で、決して病院に相談に来た小学生ではないようだ。病院できちんと診察しなければ、本当に抑うつなのかよく分からないはず。しかし、この記事ではこの点が曖昧だ。

「死にたい」だの「泣きたい気がする」だの「生きていてもしかたがないと思う」だのという台詞なら、人間、誰でも一度くらいなら口にする。だが、この言葉を口にしたからといって、直ちに抑うつ状態だとは限らないだろう。ましてやすぐに自殺に結びつくものではないだろう。

専門家による調査であれば、もっと正確な調査や言葉の定義をするはずだが、どうもこの調査にはそれを感じない。そう感じないのは自分だけだろうか?

調査項目が18項目しかないとあるし、その内容が「泣きたい気がする」「生きていてもしかたがないと思う」など、わりと一般的でよくある内容のものであるから、どうも個人的には、この調査、あまり有効性を感じなかった。

それに一人、一人に直接面談でもして、相手の情報を状態を見ているわけでもないし。

もっとも、実際の調査用紙を見たり、アンケート結果の分析内容を見ないと何とも言えないが、やや不正確で、曖昧な内容である気がしてならない。

また、やや気になったのは、記事にある「1回目で自殺を考える傾向のあった子が3カ月後に同じ傾向を示すリスクは5.5倍、6カ月後は4.1倍だった」というところだ。

この文言からすると、アンケートといっても、匿名のものではなく、前回のアンケートと次回のアンケートとで、同一人物か否かが判断できるようにしている、ということになる。

これは少々気になるところである。だいたい、こうした人の人格や高度にプライバシーが要求されるはずの内容が、個人を特定できる、というのは問題ではないか。

本人の同意があれば良いとも言えるが、何も分からない小学生に同意など求めても意味はない。父兄の同意でも求めたのだろうか?

抑うつを判断するのにも、あまり正確な調査という気もしないし、かなり突っ込んだ質問をするアンケートだったとすれば、プライバシーの問題も気になる。こうした点で、どうも何か引っかかるところのあるニュースだった。