2007年6月27日水曜日

やはり参院選の争点は年金問題か

参院選を目の前にして、支持率の低下している安倍内閣が、選挙への政策を発表した。それに関連するいくつかの記事の引用と、メモ。


「「与党重点政策」を発表 憲法は後退、年金前面に」(asahi.comより記事を引用)
2007年06月26日20時18分

 自民、公明両党は26日、参院選の共通公約となる「与党重点政策」を発表した。安倍首相が強く訴える憲法改正は、考え方に隔たりがある公明党と妥協した結果、項目には入ったものの具体性は欠く内容に。一方で「年金制度の信頼回復」を冒頭に掲げるなど、生活者重視の姿勢がにじみ出ている。また、最終調整で「農林水産業の振興」が加わった。

 自民党の中川昭一政調会長「『議論を主導し、3年後に憲法改正案をまとめる』としたい」

 公明党の斉藤鉄夫政調会長「自公でひとつの改正案をまとめる、と誤解される。これでは飲めない」

 22日、国会内の自民党政調会長室で2人はひざ詰めで文言をすりあわせた。共通公約をつくるにあたって最後まで折り合いがつかなかったのが「憲法」だ。

 中川氏は年金記録問題で受け身の戦いを強いられる中、何とか「安倍色」を打ち出そうと、憲法改正の盛り込みをはかった。しかし、斉藤氏は「改憲に性急に突き進むと思われるわけにはいかない」として「『国民的な議論を深めていく』という表現にとどめるべきだ」と主張。結局、自民党の公約にある「憲法改正」、公明党公約の「加憲」との言葉は、ともに与党公約には盛り込まれなかった。

 公明党幹部は「首相の顔を立てつつ、これが公約と言えるのかと疑問に思うほど骨を抜いた」と語る。

 ただ、首相は24日のNHK番組で「3年後に改正をめざしていくことを国民に宣言していく必要がある。それが政権として正直な姿勢だ」と語るなど、あくまで3年後に改憲の発議をめざす考えを強調している。

 一方で、公務員制度改革を「戦後レジームからの脱却」と位置づけ、「再チャレンジ支援総合プラン」の推進をうたうなど、安倍政権のキーワードもちりばめられた。首相が熱心に取り組んできた拉致問題は、自民党公約の書きぶりがほぼそのまま踏襲された。

 また、最終原案には「農業」の記述がなかったが、自民党内から「入れるべきだ」との声が上がった。参院選の勝敗を握るのは農村部が多い1人区でもあり、「地域活性化」の項目に「農林水産業を振興し、豊かな自然にあふれる美しい郷土をつくる」との一文が盛り込まれた。


この記事では、安倍内閣の「看板」の一つである、憲法改正の問題は後退し、年金問題を冒頭に掲げ、生活者重視の姿勢を出しているという。

ただでさえ、財政赤字の処理や少子高齢化など問題があるのに、安倍内閣は大臣の自殺からアメリカでの従軍慰安婦問題など、難問だらけになってしまった。この内閣は本当に大変な仕事をしなければならなくなった。

その中で年金問題をやはり全面に押し出す必要があるようだ。安倍内閣としても国民の老後がどうなるのか分からない不安な状態では、支持率は集められないと思うのは無理もない。かなり強い態度に出て来ている。


「年金記録漏れでの賞与一部返納、官房副長官3氏も」(Yomiuri Onlineより記事を引用)

 下村博文、鈴木政二、的場順三の3官房副長官は26日、年金記録漏れ問題の責任を取り、6月の賞与(ボーナス、期末・勤勉手当)の一部を返納する意向を固めた。


 返納額は検討中だが、衆院議員の下村氏と参院議員の鈴木氏は、安倍首相らと同様に、公職選挙法で返納を禁じられている議員歳費分を除いた特別職分を全額返納する方向だ。一部は行政改革の一環としてすでに自主返納が決まっているため、追加返納分は下村氏が約35万円、小泉内閣から副長官を務めている鈴木氏は約54万円になる見込み。国会議員ではない的場氏は、下村氏と同額を返納する意向だ。

(2007年6月26日20時41分 読売新聞)


まず最初に政治家が賞与の返還一部返納することで、国民にアピールするようだ。これは一部よりも全額の方がより国民にアピールすると思うが、さすがにそれはできないというところか。


「社保庁職員、賞与返納しなければ…再雇用拒否も 官房長官示唆」(Sankei Webより記事を引用)

 塩崎恭久官房長官は26日午後の記者会見で、年金記録漏れ問題の責任を取るため、政府が社会保険庁全職員に夏季賞与の一部を自主返納するよう求めたことに関連、仮に返納に応じない場合は、同庁を廃止・解体して平成22年に発足させる方針の「日本年金機構」への再雇用を拒否することもあり得るとの考えを示唆した。

(2007/06/26 18:15)



さすがに政治家のみならず、行政側にもきちんと責任を取る姿勢を示すことをした。これも政治家同様に全額の返還ではなく、賞与の一部返納を催促する態度に出た。

国民の側からすれば、社会保険庁の職員の賞与なら全額返還して欲しいものだ。今回の社会保険庁職員のずさんな事務処理のおかげで、取り返しのつかない損害を国民の受けたことになる。

それに比較すれば、賞与の一部返納などたいしたことではない。むしろ足りない年金の足しにするために、社会保険庁の職員の給与から、数年に渡って少しづつ返納して国民に返して欲しいものだ。

給与がけずられると生活に困るが、賞与ならまだ自主的に返納してもらわないと、国民は納得できない。

もっとも社会保険庁の職員が、ボーナス一括払いで何かを買っているとか、マイホームのローンがある場合はしんどいが、その程度は何とかやり繰りして、凌いで欲しいと思う。

それにしても、「日本年金機構への再雇用を拒否することもあり得る」というのは、かなり脅しに近いものだ。そこまで強引にでも職員に責任を取らせようとしている。官僚にもちゃんと責任を取らせようとする、その態度は充分に評価できる。

だが、一方でこのくらいしないと、選挙で国民にアピールするのは難しいというところだろう。


「ボーナス返納 「積極的に応じるべきだ」と社保庁労組」(asahi.comより記事を引用)
2007年06月26日19時56分

 年金記録問題を受けて社会保険庁の村瀬清司長官が全職員に6月賞与の自主返納を求めている問題で、同庁の職員でつくる「全国社会保険職員労働組合」(約1万1000人、旧自治労国費評議会)は26日、「様々な事情により自主返納に応じることができない職員に一切の不利益を及ぼすことがないことを前提に、社保庁職員として重く受け止め、積極的に応じるべきだと考える」とのコメントを発表した。


さすがに社会保険庁の組合でも、賞与の一部返納に対して賛成する態度を示した。なかなか潔い態度だと思う。それだけ国民の怒りが社会保険庁にも伝わってくるのだろう。自主返納できない職員も当然いるだろうが、なんとか努力して返納して欲しいものだ。

そもそもずさんな仕事をする職員に賞与まで与える余裕は、すでに赤字まみれの日本政府にはないはずだ。返納した分は足りない年金の足しにでもして欲しいものだ。



「社保庁の賞与一部返納、全厚生職員労組は「踏み絵」と批判」(Yomiuri Online より記事を引用)

社会保険庁の労働組合で共産党の影響力が強い「全厚生職員労働組合」(組合員数約2200人)は26日、政府が同庁の全職員の賞与一部返納を求めたことについて、「社保庁解体後の新組織採用の『踏み絵』にされ、返納が強制されかねない」と批判する談話を発表した。


 「国会審議では、『改革に後ろ向きな職員は新組織に採用しない』との考え方が繰り返し示され、分限解雇も視野に検討が行われている。また、賞与の返納で責任の所在があいまいになりかねない」などとしている。

(2007年6月27日13時11分 読売新聞)


やはり社会保険庁の労働組合としては、但し書きを付けている。しかし、もう返納を避けることはできないだろう。組合側もどこか歯切れが悪い。

それに責任の所在が曖昧になる、という批判は、どこかおかしい。責任が曖昧になるのがイヤなら、自分たちで、きちんと責任の所在を示すのが筋である。その肝心の責任の所在を明確に示せないのであるから、この但し書きが問題外だ。

もちろん、単なる賞与の返納で、責任の所在が曖昧になるのはよくないことだ。それは別に追求すればよい。だがこれは時間のかかる問題だから、責任を明確にするまで紆余曲折あるかも知れない。

国民が年金問題を監視していれば、責任の所在が曖昧になることはないだろう。ただし国民が強い関心なり批判意識を持ち続けていなければ、責任は最終的に曖昧にされる恐れはあるだろう。


なお、社会保険庁の問題について、以下の記事が興味深いものだった。


「社保庁改革阻む100の裏協定「どうにもならなかった」」(asahi.com より記事を引用)
2007年06月27日09時59分

 「組合にも責任があるが、要求を受け入れた管理者側にも問題がある」。社保庁の最高顧問だった「さわやか福祉財団」理事長で弁護士の堀田力氏(73)は、かつての経験を振り返りながら、ずさんな年金記録問題についてそう感じたという。

 年金保険料の不適切な支出、個人情報の無断閲覧。様々な問題が噴出していた社保庁を立て直すために呼ばれた堀田氏の目に、職場は無気力で怠惰な雰囲気に満ちているように映った。

 「労組との裏協定があって、どうにもならなかった」。04年9月に最高顧問となって間もなく、数人の長官経験者からこう耳打ちされた。

 組合と社保庁との覚書や確認事項による「裏協定」は100を超えていた。「窓口でのパソコン作業では、キーボードを45分操作したら15分休憩」「キーボードへのタッチは1日当たり平均5000以内」といった数々。一部の文書は「国費評からの要求の実現に向け、誠意をもって対処する」で締められていた。

 「こんな協定を求める方も問題だが、歴代長官らにも、何も手を打ってこなかった不作為の連帯責任がある」と堀田氏は指摘する。やる気のある職員が実力を出せるよう、まず裏協定の破棄作業が進められ、05年1月に完了した。

 組織改革の方向が見えてきた06年春、年金の納付率を上げるために数字を改ざんしていた問題が相次いで発覚。これまでの改革案は白紙になり、与党からは「組織を民間にしろ」の大号令が上がった。「助言はかき消され、政治家も聞く耳を持たない状態となってしまった」

 堀田氏は今年1月、最高顧問を退任。そこに、ずさんな年金記録問題が持ち上がった。「情けないし、本当にがっかり」と肩を落とす。


この記事を読むと、社会保険庁がかなり腐っているという印象を受ける。「職場は無気力で怠惰な雰囲気」というから、これは役所についてわまる問題点だ。とにかく職場に来ていれば給料がもらえ、生活ができる。そこにはなんの努力も必要ではなく、単に与えられた仕事を機械的にこなしていくだけ、という風景が浮かぶ。

ここで言われている100に及ぶ「裏協定」の内容は、じつにひどいものだ。「窓口でのパソコン作業では、キーボードを45分操作したら15分休憩」などというのなら、なぜ、今回のように入力ミスが生じて年金の支払い履歴が分からなくなる、という問題が生じるのか。

ここは実に不思議である。ここまで微々歳々に渡って「取り決め」をしておいて、それで今回のような、ずさんな事務処理が行われてきたのか、その点もきちんと説明して欲しいものだ。明らかに主張と現実とが露骨に矛盾している。

それにしても、なぜ、こんな変な協定が今まで通ってきたのか。これも不思議である。この、おかしな協定を通すために、裏で何か取引であったのだろうか。ここは社会保険庁の闇の部分に当るかも知れない。ここはジャーナリズムがこれからしっかりと突いて欲しいところだ。