2008年2月23日土曜日

良品計画の戦略について

良品計画(無印良品)はアメリカ進出にうって出ている。ニューヨークにその最初の店となる旗艦店を開店させたようだ。

このニュースを詳しく見ていないから、ニューヨークの人たちに無印良品が盛況か否かはよく分からない。開店当初はテレビニュースの映像では好評だったようだが、それが長く続くのかは誰にも分からない。

ところで、今の時点でアメリカに進出するのは、時期として本当に適当なものか、いささか疑問がある。今の時期にアメリカ進出をするのはリスクがあるような気がする。いささか心配だ。

というのは、これからアメリカでは景気が減速していき、消費が冷え込んでいくと思えるからだ。無印良品は高級品ではないが、決して安いわけでもない。その安くもないシンプルくらいが売り物の商品をアメリカ人たちが買ってくれるのだろうか。

アメリカの生活雑貨の方が、一般的に言って、見た目だけで言えば、日本の雑貨よりもまだ良くできているように思われるし、無印良品を買うだけの理由がアメリカ人にあると思えないのだが。

まあ、アメリカがこれからリセッション入りしていくのだろう、という観測はだいたい正しいのだろうと思う。またサブプライム問題で、アメリカ人が借金して消費する、という行動様式が崩れてしまったようだ。これが崩れて、もう借金もできなくなった以上、もう余計な物はほとんど買えなくなる。

これは消費が冷え込むことを意味するだろう。だからその影響を良品計画もかぶるのだが、問題はそれだけではない。

もっとも肝心なことは、これからドルが暴落していくだろうと予測できることだ。世界基軸通貨としてのドルがどうも崩壊していく過程に突入しそうなのだ。

例えばドルは原油決済に使われている。ドル建てで原油の取引が行われているのだ。しかし、イランなどはもうこれを嫌がっている。イランは日本に対しては、ドルではなく円で支払いをして欲しいと言ってきた。そしてもう円での支払いがなされているらしい。

この動きは既にイラクがやろうとしていたことだ。フセインはドルではなくユーロ建てで原油の取引をしたいと言っていた。これに対して異常なまでに怒ったのがアメリカだった。そして戦争にまで突入していった。

金との兌換を停止したドルは、実質的にただの紙切れだ。これを通貨として信用を維持するため、原油決済にドルを使うことにしたのだ。世界のどんな国も中東から石油を買う際は、ドルで決済しているのだ。

世界の基軸通貨としてのドルは、だから原油決済が信用の裏付けとして機能している。これが外れた場合は、もうドルの信用の裏付けなどないことになるのだ。だから原油決済に使われなくなると、ドルの力が弱くなるはずだ。

だからこそフセインがユーロ建てでの決済をしたい、と言い出したことは重要なのだった。アメリが尋常でない怒りを露にしたのも当然なのだ。

中東諸国は今のところドルペッグ制を維持しているが、アメリカの経済失速によりドルが下落していけばこれを外していくだろう。サブプライム問題でアメリカの経済・金融がおかしくなってきており、そこから不況が発生してくる。そして同時にドルの力も弱くなる。ドルは下落するのだろう。

ドルが下落すれば、こうれは同時に日本にとっては円高状態であるから、例え無印良品が売れても為替で損失が出てしまう。この為替の問題で、良品計画は将来、苦しむのではないか?

いや、まだ問題がある。それは、良品計画が実質的に生産に使っている中国の通貨、元が切り上がる可能性があるということだ。しかも倍くらいに切り上がる可能性がある。

さらに中国では女工などの人件費も高くなってきているらしい。人件費の高騰と将来、といってもここ数年の間に起ると思われる中国元の切り上げで、生産コストがかなり上昇してしまう可能性が大だ。

つまり、まとめると次のようになる。

1、アメリカの経済の減速により消費が落ち込む。その際に無印良品がアメリカ人に買ってもらえるだけのものであるのか。少なくとも、消費が冷え込めば、その影響を受けるのは必至だ。

2、ドルが暴落していき、円高状態になることが予想できる。この場合、商品が売れても為替で、収益が圧迫される。

3、中国での生産コストが上昇する。それは人権費の高騰(これは高止まりするかも知れない)と中国元の切り上げによる。

4、上記3点から、少なくともコスト上昇と消費の落ち込み、及び円高で収益が出ないことになり、コスト高と収益減で上手くビジネス展開できず、アメリカ進出は失敗する可能があるという気がして仕方がない。

もっとも、実質的に中国元はドルペッグだから、これを外さないかぎり、ドルが暴落してくれれば、例え元が切り上がっても、相対的に日本にとっては元高によるコスト上昇はたいした問題ではない、という予想も立てられると思う。個人的には、だけど。

このような問題もあって、例えば良品計画の株を買う際を注意した方がいいのかも知れない、という気がしている。